福岡高等裁判所 昭和24年(つ)553号 判決 1950年3月31日
被告人
竹中由松
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役八月に処する。
但し本裁判が確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
弁護人長崎祐三の控訴趣意第一点について。(前略)
原審第二回公判調書によると、裁判官が証人近藤功を訊問した後検察官及び被告人に対し、反対訊問又は補充訊問をする機会を与えた旨の記載があり弁護人に対しその機会を与えた旨の記載のないことは所論のとおりであるが、刑事訴訟法第三百八条には「裁判所は検察官及び被告人又は弁護人に対し証拠の証明力を争うためには必要とする適当な機会を与えなければならない」と規定しているので、その機会は被告人又は弁護人に与えれば足りるのみならず、公判廷において被告人が、かような機会を与えられたに拘わらず、その陳述をしない場合、弁護人は何時でも被告人のため陳述をすることができるのであるから、被告人に対し、かような機会が与えられた以上弁護人に対し特にその機会を与えなかつたからといつて、刑事訴訟法第三百八条に違反するものということはできない。この点に関する論旨も理由はない。
(註、本件は量刑不当にて破棄自判)